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2010.03.02

100302 日本版「フリー」流行の兆し

100302_bunsyun_ph2 今日の日経ビジネスONLINE 「時事深層」で
 「この本、丸ごと無料です」
 という記事を読んで、なるほどと感心しました。

 記事にも書いてある通り、この発想はベストセラー本「フリー」の二番煎じですが、異なるのは本をまず出版し、版を重ねて元がとれたので本の内容全てをPDFファイルでインターネット公開するという、あとさき逆の考えだということです。

 この考え方って、これからかなり広がりそうですね。
 理由1.著作者にとってはすでに原稿料以外に充分な印税を得ており、寛容になっている。
 理由2.出版社にとっては、印刷製本と書籍流通のコストに対する、膨大な返品リスクを考えると、今後更に重版するより、無料宣伝でクチコミが広がれば、購入希望者の底辺が拡大するので息の長い持続的な販売に期待できる。

 前宣伝がよいのか後宣伝がよいのかは内容と本の価格次第かも知れませんが、今回のような事例は読者にも好意的に受け入れられやすいので増えると思います。
 もちろん、インターネットで全文公開される前に本を購入した人からは、苦情が入る可能性もありますが、青空文庫のように、著作権が切れた本を無料公開しているのと同じと考えれば、手元にベストセラー本が残っているのですから、無駄金とは言えません。

 今後、ベストセラーによって充分な報酬を得た著作権者が出版社と話しあって、インターネットで無料公開するケースが増えるでしょう。
 極端な発想で言えば、重版が10版以上になったら、あるいは5万冊以上になったら、著作権者さえ承認すればすべてインターネットで公開するような原則を作れば、KindleやiPadの普及と相乗して若い人達の活字離れも解消し、日本の文化水準向上にも大いに資するし、50%にものぼる書籍流通の返品も減少し、資源の節約にもなると、期待出来ます。

参考:初版部数を考える 

【記事引用】日経ビジネスONLINE 「時事深層」 2010年3月2日(火)
「この本、丸ごと無料です」  中原 敬太(日経ビジネス記者)

3月1日、文芸春秋が1冊の新書を全文無料で公開する。無料公開で本は売れなくなるのか、それともさらに売れるのか。電子書籍の登場で揺れる出版業界の注目を集めそうだ。

 大手出版社の文芸春秋が3月1日から1つの実験を始める。昨年10月に出版した新書『生命保険のカラクリ』をインターネット上で全文無料で読めるようにするというもの。大手出版社が丸ごと1冊を無料で公開するのは極めて異例のことだ。

著者の強い希望で実現
 今回の「実験」を言い出したのはこの新書の著者である、岩瀬大輔氏だ。ネット経由で死亡保険や医療保険を販売するライフネット生命保険の副社長である彼はこの本の中で、従来の生命保険のコスト構造を明らかにするなど、生保業界のタブーに切り込んで話題を集めた。

100302_bunsyunbunko02 彼の周囲の著名人のブログなどで取り上げられ、アマゾン・ドット・コムなどネット書店を中心に売れ行きは好調。出版から3カ月で6刷が決まり、発行部数は2万9000部に達した。

 「さらに多くの人に読んでもらうためには、どうしたらいいか」

 出版当初からネットでの無料配信に関心があった岩瀬氏は、クリス・アンダーソン氏の『フリー』の存在を知り、その思いを強めた。『フリー』は、無料にすれば利用者が増え、結果として利益を生むと主張。その本自体が先着1万人にネットで無料公開され、ヒットにつながった。岩瀬氏は文春の担当者に相談した。

 前例のない提案に、最初は戸惑いを隠せなかった文春だが、「どこかが始めるのは時間の問題。文春のような保守的な出版社が先駆けてやることに意味がある」という岩瀬氏の熱意に押し切られる格好で承諾した。
 一部分だけの配信も検討したが、最後はPDF方式で全文公開を決断。期間のみ4月15日までと限定した。年代と性別を答えると、ダウンロードでき、後はコピーするなり、メールで転送するなり、ユーザーの自由だ。

100302_bunsyunbunko_02 ネットで無料公開したら、本が売れなくなるという意見に対しては、「全部印刷する手間と費用を考えたら、新書を買った方がいいと考える人も少なくないはず」(岩瀬氏)と予想する。

 確かに、新書は235ページ。すべて印刷すると1枚5円でも採算が合わない。きちんと製本された形を819円で手に入れられると考えれば、本を購入した方が割安という見方もできる。

 今回の岩瀬氏と文春の取り組みは、起爆剤となって他の書籍にも影響を与えるのか。文春新書の飯窪成幸編集部長は比較的冷静だ。

 「我々は自社の持つコンテンツを大切にするために、どうすべきかを考えなければならない。今回のやり方も1つの方法だとは思っているが、ネット上はすべてタダという考え方は危険」と話す。実験の結果がどうであれ、すぐにほかの新書や書籍の無料公開に踏み切ることは考えていないという。

出版業界の今後占う?
 出版業界はこれまで、著者も出版社も、無料公開はコンテンツの価値否定になると二の足を踏んできた。しかし今回、著者が自ら希望し、それに出版社も同意したのは第一歩と言える。

 内容によっても異なるが、時流を捉えたテーマで勝負することが多い新書は、それだけ賞味期限は短いと見られる。しかし今回のように発売から4カ月が経過した新書の無料公開は、寿命をさらに延ばす可能性もある。

 文春という大手出版社を巻き込んだ今回の実験は、出版業界で話題になりそうだ。どちらの結果となっても、それはキンドルやiPadの登場により、紙媒体と電子媒体の間で揺れる出版業界に有用な視座を与えるに違いない。日本版『フリー』の実験に注目が集まる。

日経ビジネス 2010年3月1日号117ページより

Posted on 3月 2, 2010 at 12:53 午後 |

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